2025年度 一般社団法人科野青年会議所
理事長所信
第56代理事長 和田 仁
【仁】
紀元前500年の昔に孔子という思想家がいました。人々に慕われ、先の事を見通す能力があり、私欲に負けることなく社会に貢献した人物です。孔子が残したものに「論語」があります。紀元前の思想ですが、今現在の世の中でこそ参考にするべき教えが書かれています。人間が尊厳をもって生活する道標となる、まさしく青年会議所の目指す崇高な理想と同じ考えであると言えます。私は天邪鬼な性格なので、他人の考えに対して穿った見方をしがちなのですが、孔子の言葉は素直に受け入れることが出来ます。「論語」の中に「人の己を知らざるを患えず、人を知らざるを患うる也。」という言葉があります。他人から評価されないことを気にして、自分自身が他の人を認めないでいる事を批判した言葉です。自己中心的な思考でいませんか?一つの出来事に於いても自分の捉え方と他人の捉え方が常に同一とは限りません。私自身も常に自分の中にある答えが正しいものとは限らないということに気づき、一つの物事に於いても様々な角度から検討して複数の選択肢を見出せるように考えるように心がけるようになりました。
そして、400編以上にもなる教えの中でも孔子が最高の道徳として説いたのが「仁」です。自分の利益を欲することよりも、他人を思いやり礼儀をとり行うこと。そこに至るには大変な努力を積み重ね、幾多の困難を乗り越えた結果辿り着ける大いなる徳義と言われています。
【鶏口牛後】
積極的な姿勢と、消極的な姿勢という相反する物事への向き合い方があります。消極的な行動が悪いという事ではないですが、最近は和を乱す事を良しとせず、初端から行動をしない事を選んでいると感じる場面が多々見受けられます。私自身もあらゆる場面で積極的な選択を選んでいるわけではありません。しかし、他にも一緒に行く人がいないと自分も行かないとか、先に発言した人に意見を合わせたりしている場面を見ると、もっと自分を信じて行動すれば良い結果につながるのではないかと思います。物事を良い方向に進める際には、先陣を切る人間が必要です。青年会議所の会員はこの先陣を切れる人間であるべきだと思います。「鶏口となるも牛後となるなかれ」大きなモノ、強いモノの下で自らの意見を殺して、最悪なのは自分の意見を持つことすら無いまま他人の意見に従っているようでは、社会により良い変化をもたらすことはとは出来ません。たとえ小さな組織でも、少数側の見解だったとしてもその先頭に立ち、自らの意見を発信することこそが、希望をもたらす変革の起点となることでしょう。一人一人が強い思いを持ち、一人一人が先頭に立つという意気込みを持って進んでいきましょう。案ずるより産むが易し、時には“悩む前に跳ぶ”ことも必要になるでしょう。挑戦した結果の失敗であれば大いに失敗するべきです。「失敗は最高の師匠である」失敗の責任は私に負わせてください。皆が自分の考えに自信を持ってと活動できるよう支えていきます。
【人を育む】
「生涯一書生」私たちは常に学ぶ姿勢を忘れてはなりません。学生でなくなり就職してしまうと、勉強する機会が自然にやってくることは稀です。しかし、技術の進歩が激しい現代では、時代の流れについていけないと、たちまち置いて行かれてしまいます。人は何歳になっても、自ら進んで学びの機会を得ようとしなければ、若い世代の新しい価値観を持った人や、新しい情報を積極的に取り入れている人に大きく差をつけられてしまいます。青年会議所は人を育てる役割も担っています。ここ数年の間に先輩方や現役メンバーの献身的な活動のおかげで多くの会員に入会して頂きました。いずれは社会の先頭に立ち、地域社会全体の発展に貢献する活躍をすることでしょう。組織を拡大させる為に、また地域に影響を与える活動をするためにも新入会員を増やすことは欠かせません。挑戦する決意を持ち入会してくれた会員にこれから先、多くのことに挑戦していってもらうために、成長の機会や活躍の場面を提供することが必要です。青年会議所では学びの機会がたくさん用意されており、多くの先輩方が社会により良い変化をもたらすため学んだことを活かして様々な活躍をされております。青年会議所での学びには、事業の企画や自らの行動、発言を通して自発的に得ることの出来るものと、学生時代の勉強のように青年会議所の共通の目標や、理念、事業構築の基礎を学ぶアカデミープログラムがあります。40歳までという人生の中で最も花が咲く期間にここで貴重な経験を積み、新しい見識を広めてください。一度得た経験は生涯に渡って人生を豊かにするため役に立つでしょう。そして、自分の人生の糧とするだけでなく、自身の経験を次の世代へ“つなぐ”ことで先々の代でより大きな実を結ぶことでしょう。
【明るい豊かな社会】
青年会議所は「明るい豊かな社会」の実現を理想として活動を行っています。自分自身の成功だけではなく千曲市、坂城町に生活している人のこと、より広い地域を見据え世界中の人たちが、この時代、この場所に生きていることがありがたいと思えるような社会が到来したのならば、「明るい豊かな社会」の実現といえるのではないでしょうか。
自分個人の利益を追及するだけではなく、周囲の人々も含めた社会の利益を考慮した活動を目指す事により実現できると考えます。人間として生きていく以上、物事の判断に於いてどうしても自分自身のことを優先して検討します。それは、私自身も含めほとんどの人に当てはまるのではないでしょうか。しかし、地域に貢献するという活動目的に共感して、貴重な時間やお金を供出している以上、社会の未来のことを判断の過程に取り入れることを今まで以上に意識して活動に取り組むことが望ましいのではないでしょうか。今までは自分本位に決定していた事も、少しだけ「明るい豊かな社会」という理想を意識しましょう。“可能性は無限大ともに歩もうその一歩”皆で重ねた一歩一歩の積み重ねが最終的な理想の実現にたどり着くはずです。
【新たな時代へ】
2024年度、私は初めて副理事長という役職を任され、科野青年会議所創立55周年記念式典を担当させていただきました。周年事業の設営を任されるにあたり、先輩方のこれまでの活動を拝見しましたが、とても意義の感じられる活動の記録が多くありました。千曲川に堂々とかかる粟佐橋の建設や、上信越自動車道の誘致など、今では考えられない大きな事業でした。事業の実現までに、メンバー同士で何度も議論を繰り返し、一つ一つ課題を乗り越え、計り知れない努力の結果として一つの時代を築き上げました。今の私たちは、どうでしょうか。メンバー同士で夜遅くまで議論を行っているでしょうか。もちろん仕事や家庭を持っている中での活動です。大変なのは身をもって把握しているつもりです。それでも、地域のためにと意気込みをもって入会した割には、苦労を避けている様に感じられることが多々あります。
私は苦労した先に価値を得られると思っています。人生の中では私たちは数多くの選択肢を時には悩んで、時には無意識のうちに選んでいます。楽な選択肢と困難な選択肢がある際に楽な選択肢ばかり選んではいませんか?楽な選択肢を選び、苦境から逃げた先に価値ある結果は得られません。困難な状況に挑み、歯を食いしばり、粘り強く、自分に出来るすべての事を惜しみなく出した末に価値のある結果を手に入れることが出来ます。55周年のテーマに掲げたように、“新たな時代へ”向かって困難に立ち向かいましょう。メンバーそれぞれにとって挑戦する一年にしましょう。その結果として科野青年会議所を地域から愛される価値ある組織にしましょう。
【From Shinano with Love】
いろいろな考えを持った人間の中でもとりわけ高い志を持った仲間がここに集まりました。入会の日より尊敬する仲間の高い能力に遅れをとらないよう必死についてきました。理事長を引き受けるにあたり「この一年で私には何が出来るだろうか?」と考えましたが、自分自身が納得できる答えは未だに見つかっておりません。きっと可能性が無限にある証拠なのでしょう。一年後、ともに歩む仲間が無限の選択肢の中から答えに導いてくれると信じて、私はがむしゃらに今自分に出来ることに全力で打ち込んでいきます。困難な状況からも逃げたりせずに、強く、優しく、こころ豊かな未来へ向けて歩んでいきます。「仁」という名前を授けられた者として、この名前に恥じないように、他人を思いやり、礼儀を尽くし、科野より愛をこめて、与えられた使命に挑戦致します。